相続税の納付は金銭で納付することが原則ですが、やむを得ない場合には財産で納める物納が認められます。
ただし、物納を申請するためにはさまざまな要件をすべて満たす必要があります。
今回は相続税の物納ができる要件と注意点について解説していきます。
物納ができる要件
物納を利用するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 延納しても金銭で納付できない
- 物納できる財産は物納適格財産で申請の順位を満たしている
- 物納に充てる財産は物納不適格財産でない
- 納付期限までに申請書を提出する
延納しても金銭で納付できない
延納という分割払いの制度を利用しても、金銭納付が困難な場合のみ物納が可能です。
納税者に資力があり、延納をすれば納付可能と判断される場合には物納申請は却下されます。
物納できる財産は物納適格財産で申請の順位を満たしている
物納できる財産は物納適格財産に限られ、その順位に従って申請する必要があります。
物納の対象となるのは、日本国内にある不動産や有価証券、動産(美術品や自動車など)であり、定められた順序で物納を行うのが原則です。
物納に充てる財産は物納不適格財産でない
物納に充てる財産が物納不適格財産に該当していないことも重要です。
たとえば、不動産で担保権が設定されているものや利権関係に争いがあるもの、土地で境界が不明なものや公道に接していないものなどは不適格とされます。
有価証券の場合でも、譲渡制限がある株式や反社会的勢力との関わりが疑われる企業の株式は認められません。
納付期限までに申請書を提出する
物納の申請期限は相続税申告と同じで、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。
期限を過ぎると延滞税や加算税が課されるおそれがあるため注意が必要です。
期限内に申告できない場合には「物納手続関係書類期限延長届出書」を提出することで延長が認められる場合があります。
物納をする場合の注意点
物納は要件を満たせば誰でも利用できる制度ではなく、申請しても必ず認められるわけではありません。
物納財産として認められる条件は非常に厳しく、不適格財産に該当した場合は申請自体が却下されてしまいます。
また、物納申請には登記簿謄本や境界確認書、測量図などの多くの書類が必要で、準備に時間がかかるのが一般的です。
申請が期限に間に合わない場合には延長手続きを行うことも可能ですが、その間は延滞税が発生するため、余裕を持って準備を進める必要があります。
まとめ
今回は相続税の物納ができる要件と注意点について解説しました。
物納は金銭での相続税納付が困難な場合に利用できる制度ですが、認められる要件は厳格で手続きも煩雑です。
期限内に適切に利用するためにも税理士への相談を検討してみてください。